金星日面通過解説


 私たちの太陽系には9つの惑星が回っています。地球より内側を回る惑星は水星と金星の2つで内惑星と言います。地球の外側には、火星、木星、土星、天王星、海王星、冥王星があります。これらを外惑星と言います。内惑星は、地球と太陽の間にあるので、うまく一直線上に並ぶ場合があります。地球の内側を回る惑星である金星と太陽の見える方向が一致するとき、太陽の前を金星が通過することで起こる現象が「金星日面(太陽面)通過」です。イメージをつかんでもらうために、2004年6月8日の太陽系の軌道図を作ってみました(ここでは火星より内側だけが描かれています)。

 今回中継する現象は、2004年6月8日(火)の日本時間14時過ぎから日没まで見られるもので、14:11頃に金星が太陽の前に現れ始めるときがもっとも面白い瞬間になります! 金星日面通過を今生きている人で見た人はいないそうです。なぜならこの現象は130年ぶりだからです。次回は8年後の2012年6月6日に見られますが、その次に太陽、金星、地球が一直線に並ぶのは2117年12月10日になります。なので、一生に一度見られればラッキーな極めて珍しい天文現象と言えるでしょう。

 太陽の周りを惑星が回る速さは内側の惑星ほど速く(ケプラーの法則と言います)水星は88日で、金星は225日で一周します(金星はほかの惑星とは違い、公転方向とは逆向きに自転しています)。 金星人がいたら金星の一年は地球で言う225日ということになりますね。では、どれくらいの頻度で、太陽から見て金星と地球が同じ方向に来るでしょうか? これを会合周期と言います。金星の場合は584日です。どうやって計算するかは、ちょっと考えてみてくださいね。

 ・・・と、何か妙ですね? 金星は地球と太陽の間を何度も横切っているはずですが、先ほど書いたように前回の金星日面通過は130年以上前のことです。なぜ130年間も現象が見られなかったのでしょうか? それは、平らに見える太陽系も実は各惑星の軌道面がちょっとずつ傾いているからなのです。金星の軌道面が地球の軌道面に対して約3.4度傾いているのでこの傾きのために、金星が地球と太陽の間にぴったり入ることができるのは、6月の方向(図で示した方向)と反対側の12月の方向だけになり、他の場合は太陽の北側か南側に少し外れて通ります。

 ちなみに外惑星の場合は一直線上になっても太陽の反対側に惑星が来る(これを衝と言います)だけなので、真夜中に一晩中見えるというだけで現象にはなりません。


Q:現象を見るときの注意点は?

A:太陽を直接見てはいけないということです。望遠鏡から覗くと失明の危険があります。絶対に望遠鏡や双眼鏡、カメラレンズを通して太陽を見ないで下さい。肉眼で太陽を凝視しても、目を痛めることがあります。太陽を観察するには、望遠鏡の像を直径15cmくらいの白い紙に投影して行ないます。

Q:望遠鏡だと、どのように見えるのですか?

A:水星よりも大きいので黒点と間違えることはないと思いますが、それでも太陽と比べれば遥かに小さいです。太陽がいかに大きいかわかるでしょう。時間の経過とともに動く小さな黒い点を見つけましょう。

Q:大きさや太陽からの距離が地球に近い金星の地球と違う特徴というのはありますか?

A:その大きさや太陽からの距離などから考えて,地球に似た条件の下に形成されたと考えられていて,地球の兄弟星といわれますが,地表のようすや大気組成は地球とは全然違います。金星の地表は地球に比べて平らで,平原が60%,高地が13%,低地が27%です。表面の気圧は地球の90倍,温度は摂氏500度近い高温で,鉛も溶けるほどの高温です。当然,液体の水(海)は高温のため蒸発してありません。大気は厚い雲におおわれていて,成分はほとんどが二酸化炭素です。雲は急速な回転をしていて、写真で見える上層雲はわずか4日間で金星を一回りしていす。ものすごい早い風が吹いていると考えられます。またときどき硫酸の雨が降ることもあるようです。とても人が住めそうにありませんね。


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(2004年6月01日、高知工科大学 電子・光システム工学科講師、山本真行)