小型気球を用いた成層圏の直接観測に向けて

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 成層圏は、国際線の飛行機などが飛ぶ高度およそ10 kmの対流圏界面(この高度より上では雲がほとんど発生しない)より上の高層大気のことで、高度およそ50 kmまでの範囲の成層した(安定な)大気を指します。成層圏の高度およそ30 km付近までを直接観測できる手段として気球があります。JAXAは北海道大樹町などで大気球を用いて質量100 kg超の大きな観測装置を搭載した実験を行っていますが、私たちは手軽に多数回の比較実験ができる近未来を目指して、小型気球とパラグライダーを用いた準着陸誘導型の気球システムを開発してきました。
 大学の研究テーマは時として学生からのアイデアを元に始まることがあります。本研究はまさに学生提案の係留気球実験から始まり、徐々にその目標レベルを上げて科学研究に役立つ新たな工学技術の獲得に向けて進められています。2016年2月には、本学キャンパス内で高度30 mの高所作業車からの滑空制御試験を実施しました。現在は、パラグライダーシステムの開発がほぼ終わり、高度100 mのドローンからの投下・飛翔実験に向けた準備を進めています。
 これに関連して、2017年10月には、スウェーデンの宇宙物理学研究所、ルレオ工科大学と連携し、国際共同の学生実験BEXUS/EXISTに取り組みました。ルレオ工科大学のEXISTチームの学生はデータ収録部分を製作し、私たちはインフラサウンドマイクを提供しました。残念ながら途中でデータ記録が途切れましたが、高度11 kmまでの観測に成功しました。