観測ロケットMOMOシリーズを用いた音波実験

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 身近に様々な音が溢れ、音の技術は生活の中で活用されていますが、意外にも地球上空の大気中を音波が伝わる様子はまだよくわかっていません。私たちは、インターステラテクノロジズ株式会社(IST)が開発中の観測ロケットMOMOシリーズに独自開発したインフラサウンドセンサー(超低周波音マイク)を搭載し、上空での音波実験を行っています。2018年6月30日のMOMOロケット2号機は残念ながら打ち上げに失敗しましたが、MOMOシリーズ初の科学観測ペイロードとなりました。地上10ヶ所以上でも音響観測を行い、ロケット落下後にも搭載機器および地上センサー群により爆発規模のデータが計測されました。そして2019年5月4日、リベンジとなったMOMOロケット3号機は高度113.4 kmの宇宙(熱圏下部)まで飛翔し、成層圏上部から熱圏に至る領域での音波計測を実現して、民間独自開発ロケットを用いた初の科学観測に成功しました。
 音波の計測は、上空100 km超への到達能力を有すMOMOロケットを用い、高度およそ40 kmのロケットエンジン燃焼終了後から最高高度地点へ到達、そして下降し太平洋への着水までの間、同ロケットのテレメータにより通信可能な時間帯で行います。MOMO3号機では打上後282.5秒までのデータを取得しました。搭載装置は、メイン・サブの超低周波音マイク2台とブザーで構成されており、15秒おきにブザー音を発生させ希薄大気中で音が聞こえなくなっていく様子を計測します。MOMO2/3号機では地上では「音玉」(号砲花火)と呼ばれる打揚花火を用いてロケット打上前と打上後に音波源を人工的に生成し、高層大気中まで音波が伝達しているか減衰率は予想される通りであるか等、観測ロケットでしかできない実験を試みました。結果は解析中ですが、花火と思われる信号が思いのほか大きく見えています。
 2019年7月27日には、早くもMOMOロケット4号機の打ち上げが行われました。MOMO4号機ではブザーを1台から2台に変更して花火を打ち揚げず、静穏な環境下でのブザー音の変化を詳細に見たいと考えました。残念ながらMOMO4号機は上昇中の何らかの異常検知に伴う自動停止により最高高度13.3 kmまでの飛翔に留まりましたが、MOMO3号機の成功から僅か2ヵ月後にMOMO4号機という高頻度で、実験条件を少し変えた宇宙実験が行える迅速さは、民間ロケットを用いた大きな強みであり研究進展に繋がると考えています。MOMO4号機でも地上5ヶ所にインフラサウンドや可聴音の観測装置を配置し、防災に向けたインフラサウンド研究を加速するための同時観測を行いました。
 MOMO5号機は、2020年5月の打ち上げ予定が新型コロナウィルス関連の事情から延期され、同6月14日に打ち上げられましたが異常検知に伴う自動停止により最高高度11.5 kmまでの飛翔に留まりました。出張自粛中のため、現地のIST社員の皆様に地上観測機器の運用を委託しました。次回は、MOMO7号機での実験実施を予定して観測機器を搭載済で、7月に打上直前停止したロケット側の不具合改修を待っているところです。MOMOロケットに関する詳細は、IST社のページをご覧ください。私たちは、今後も継続して学生が参加可能な宇宙実験に挑戦していきたいと考えています。