回路図 Schematics

2017-04-03

回路図

回路図とは回路がどのようなものであるかを図で表したものである.回路図で表現されるものは,(1) 回路素子の種類と各種パラメータ, (2) 回路素子の接続関係であり,回路素子は回路記号で表現する. 回路素子のパラメータとしては,トランジスタや集積回路などの型番,抵抗値,容量値などの定数があり,回路素子を相互に接続するのが配線である. 回路の表現方法,つまり回路図の描き方は,JIS規格,IEC規格などの工業規格で定められているが,この資料では厳密には考えずに 教科書や専門書などの文献で使用されているものを説明する.

ここでいう回路素子は回路部品とは異なるものである.回路部品は実際の回路を作成する際に必要となる部品で, 機構部品やプリント基板などを含み,回路図には記述されないものもある.また,回路図上では 表現されているが,部品として存在しないものもある. このため,回路を説明するために使用される回路図,設計/解析するために使われる回路図,回路を作成するための回路図は異なったものになることがある.

回路素子

回路素子は大きく分けて(1)受動素子,(2)能動素子,(3)機械素子に分類できる. (1)受動素子(passive element)は 抵抗,キャパシタ,インダクタ,電圧源,電流源など. (2)能動素子(active element)はトランジスタ,MOS FET,ダイオードなど. (3)機械素子(mechanical element)は スイッチ,ターミナル(端子),基板,筐体など.である.

回路記号は回路素子を記号で表したものである.この資料では,おもにアナログ電子回路で使用される受動素子と能動素子(半導体)の回路記号について説明する.

回路図の例

回路図の例を図1,図2に示す.図1はADコンバータの前段に付ける増幅回路, 図2はエミッタ接地増幅回路の例である. これら二つの回路図の書き方には大きな差がある. 図1は回路を作成することを意識してオペアンプや抵抗,キャパシタなどのパラレータに具体的な値を指定しているが, 図2では回路の動作の説明をするために必要な素子の番号だけが書かれている. また,接地(グランド),抵抗の記号には異なるものが使用されている.

図1 回路図の例(1)
図1 回路図の例(1)

図1 回路図の例(1)
図2 回路図の例(2)

このように,回路図に使用されている記号や回路図の書き方は規格はあるがそれだけにしたがあっている訳ではなく, その目的に合わせていろいろなものが混在しているのである.

回路素子の記号

回路記号の規格にはJIS規格(JIS C 0617) ,国際規格であるIEC規格(IEC C 60617)などがあり, この資料で「規格」という場合はこれらの規格を指している. また,これらの規格は定期的に改訂が行われているため,この改訂により同じ回路素子を表す記号が変わっていることもある. そこで,最新の規格を「新規格」,それに沿った記号を「新記号」と呼び,改訂された古い規格を「旧規格」,それに沿った記号を「旧記号」などと呼ぶことにする. 本来ならば,これらの新規格に沿った回路記号を使用すべきであるが, 実際には旧規格の記号や慣習的に使用されている記号が混在して使用されている. これらをすべて挙げるのは煩雑すぎるので,受動素子,能動素子の中からよく使われている記号のみを紹介することにする. また,この資料では手書きで回路図を作成することを前提として説明を行なう.

回路シミュレータやプリント配線基板(Print Wiring Board:PWBまたはPrint Circuit Board:PCB)の設計の ためのCADソフトウェアでは回路図を入力するための回路図エディタが付属していることがある. このような回路図エディタでは,ソフトウェアにより指定された記号を 使用する必要がある.

回路シミュレータでは,シミュレーション条件なども回路図と一緒に記述する必要があることが多く,部品としては存在しない信号源などの 記号を使用することがある.逆に,プリント配線基板用CADでは,機械素子であるスイッチ,ターミナル(端子)などについても記述が必要である.

回路記号は,図でその情報を伝えるものであるので,他の記号と区別が明確につき,見た目も見やすいものであることが要求される. したがって,手書きの場合には,直線の長さの差,角,曲線などがはっきりわかるような描き方をする必要がある.

回路図の描き方(暗黙のルール)

回路図は,正確に回路を表現するだけでなく,間違いなく読み取れる必要がある.そのため,描き方には暗黙のルールとして以下のようなものがある. (1)信号が左から右に流れるように描く.逆向きや上下方向になる場合はそれが明確にわかるような形にする. (2)電源は接地(0V)を中心として,上がプラス,下がマイナスとなるように描く.したがって,電源端子への接続は,電圧がプラスの場合は下から上,電圧がマイナスの場合は上から下になる.

このルールにしたがうと,回路図は自然に横長になる. アナログ回路の場合は,フィードバックループを除けば,ほぼこのルールに従って描くことが出来る.デジタル回路の場合は,一番大きなLSIや集積回路を 中心として,信号の流れがよくわかる描き方を工夫することになる.