電源と信号源 Power and Signal Source

2017-04-03

電源と信号源

ここで説明する電源や信号源は,電圧源では内部抵抗が0,電流源では内部抵抗が無限大であると仮定できる理想的なものであり,現実の部品としては存在しない. 現実に内部抵抗を表現する必要がある場合は,抵抗またはインピーダンスを電源や信号源に直列または並列に追加する.

図1(a)は直流の電圧源をあらわす.直流の電圧源は長さの異なる2本の平行な直線で 表現する.長い方の直線が+端子,短い方がー端子をあらわす.2本の直線の長さに差がないとコンデンサの記号と紛らわしいため, 長さの差がハッキリとわかるように1対2程度の差を付ける.

また,図2(a)のように短い方は少し太く書くこともあるが,長さの差がはっきりしていれば同じ太さでも問題ない. なお,この記号は小学校や中学校の理科の教科書では電池の記号として扱われ,電圧により複数の記号を重ねた表現をすることがあるが, 電圧源を表現するために使用する場合は,重ねずに電圧を記号のそばに表記する.

図1(b)は理想電圧源,図1(c)は理想電流源を表す記号であり,直流,交流いずれの場合にも 使用される.電源の極性,電圧,電流,周波数,波形などのパラメータは記号のそばに表記する.

図1 電源の記号(1)
図1 電源の記号(1)

図2(b)は電流源をあらわす.直流の場合は円の中に電流の流れる方向,交流の場合は正の値を取る方向を表す矢印を描く. なお,電流源としては図2(c)の様に円を少しずらして描いたものも存在する. この記号では流れる電流と極性は電圧源と同様に記号のそばに表記する.

図2(d)は回路シミュレータなどの回路図エディタで良く使われている信号源の記号である. 直流,交流,波形の区別なく電圧源もしくは電流源として使用され,電圧,周波数などのパラメータはシミュレーションのための指示として記述される.

図2 電源の記号(2)
図2 電源の記号(2)

図3(a)は交流の電圧源をあらわす.円の中に1サイクル分のサイン波の波形を描く. この記号のバリエーションとして,図3(b),(c)のように円の中の波の形を三角波,矩形波にして信号波形をあらわすことがある. 交流の電流源は直流と同じ図1(b),(c)を使用する. 交流の電圧源,電流源は周波数または角周波数を電圧,電流とともに指定する必要がある. これらの記号は,サイン波だけではなく,一般的な信号源を表現するのにも使用される.

図3 信号源の記号
図3 信号源の記号

なお,電圧源で電圧が0であるものは,短絡(ショート)された配線(図4(a))と同じであり,電流源で電流が0であるものは, つながれていない(開放)オープンな配線(図4(b))と同じである.

図4 電圧源と短絡,電流源と開放
図4 電圧源と短絡,電流源と開放

電源,信号源にかかわらず記号は原則として縦に描く. 直流電源の場合,回路図の描き方の暗黙のルールにしたがって,上側がプラス,下側がマイナスとなるように描くのが普通である. 交流電源,信号源の場合は,接地点(0V)に対しての極性を考え,上側がプラス,下側がマイナスとなるように描くのが普通である.

制御(従属)電源

別の端子間の電圧または電流により電圧源の電圧,電流源の電流が制御される回路素子は制御電源または従属電源と呼ばれ半導体素子や増幅回路のモデル化などに用いられる. 制御電源または従属電源は実際の部品としては存在しない理想的な素子である. 制御を電圧,電流で行うかと,電源が電圧源か電流源かで4通りの組み合わせが存在し, それぞれを電圧制御電圧源 VCVS (Voltage Controlled Voltage Source),電圧制御電流源 VCCS (Voltage Controlled Current Source), 電流制御電圧源 CCVS (Current Controlled Voltage Source),電流制御電流源 CCCS (Current Controlled Current Source)と呼び, 図5(a),(b),図6(a),(b)の様に表現する. これらの制御電源の制御端子は電圧,電流源の制御する電圧の名前,電流の名前を表記することで省略されることもある.

図5 電圧制御電源(信号源)の記号
図5 電圧制御電源(信号源)の記号

図6 電流制御電源(信号源)の記号
図6 電流制御電源(信号源)の記号

VCCSを使用したBJTの小信号モデルを図7(a)に, VCCSを用いたMOS FETの小信号モデルを図7(b)に示す. 図7(a)のBJTの小信号モデルではベース・エミッタ間の入力電圧によりコレクタ電流が制御され, その係数を相互コンダクタンスgmで表現している.また,VCCSの制御端子は省略されている. 図7(b)のMOS FETの小信号モデルではゲート・ソース間の入力信号によりドレイン電流が制御され, その係数を相互コンダクタンスgmで表現している. なお,従属電源は電源や信号源信号源と同じように記号は原則として縦に描くのが普通である.

図7 電圧制御電源を用いたトランジスタのモデル
図7 電圧制御電源を用いたトランジスタのモデル

電圧源と電流源の描き方

電圧源,電流源は記号を縦にして上下から接続するように描くのが普通である.それ以外の場合は記号を横もしくは斜めに描くことになるが, 理想電圧源と理想電流源の記号は丸の中に縦棒,横棒の形なので横や斜めの場合にどのように描くか混乱しがちである.図8および図9に 理想電圧源,理想電流源を縦,横,45°の向きに描いた例を示す.図8(b),(c),(d)はいずれも理想電圧源で 図1(a)をそのまま角度を変えて描いたものである.理想電流源の場合は図9(b),(c),(d)に示すようになる.

図8 理想電圧源の描き方
図8 理想電圧源の描き方

図9 縦以外の理想電流源の描き方
図9 理想電流源の描き方