2015-04-01
電子回路をあつかうときにはいろいろな物理量を表現するために数々の変数や略号を使用する. ある物理量をあらわす変数/略号は慣習により決まったものが用いられることが多い. このような変数は1文字だけでなく,複数の文字の組み合わせになっていることもある.ここでは, このような変数/略号の一般的に用いられる名前の付け方について説明する.
まず,英文字1文字の場合,または複数文字の一文字目はプライマリ・シンボルと呼ばれ,表1に示すような量を表す. プライマリ・シンボルは,大文字は直流,小文字は交流または小信号変動を表すのに使われることが多い. ここで,Eが電圧とエネルギーを表すように,同じ文字が異なる量を表すために使用されることがあるので注意すること. 大文字は直流である場合に,小文字は交流または小信号で場合に使われることが多いが,決まっているわけではない. たとえば,大文字のTは温度を表す記号として使われるが,小文字の t は時間を表すに使われる.
プライマリ・シンボル | 項目 | 測定単位 | 単位記号 |
---|---|---|---|
b | サセプタンス | シーメンス | S |
C,c | キャパシタンス | ファラッド | F |
E | エネルギー | ジュール | J |
電圧 | ボルト | V | |
f | 周波数 | ヘルツ | Hz |
G | ゲイン | デシベル | dB |
g | コンダクタンス | シーメンス | S |
I,i | 電流 | アンペア | A |
L,i | インダクタンス | ヘンリー | H |
P,p | 電力 | ワット | W |
Q,q | 電荷 | クーロン | C |
R,r | 抵抗 | オーム | Ω |
T | 温度 | 度 | °C,°F,K |
t | 時間 | 秒 | s |
V,v | 電圧 | ボルト | V |
Y,y | アドミッタンス | シーメンス | S |
Z,z | インピーダンス | オーム | Ω |
2文字以上の場合は,2文字目以降をセカンダリ・シンボルと呼ぶ. このような場合,1文字目が表1で示されるような量を表し,2文字目以降が その量を限定して,説明するために使用される場合と2文字目以降も量を表す場合に分けられる. 2文字目以降も量を表す場合は,二つの量の積を表す場合が多い. ただし,NF(雑音指数),BW(帯域幅)のように2文字で1つの量を表す場合もある.
量を限定,説明するために使用される場合は,2文字目以降は添字(サフィックス)として小さく記述され, 全体として図1のような表記になる. セカンダリ・シンボルは表2,表3に示されるような端子や条件をあらわすために使用される. 複数のセカンダリ・シンボルが並べられるときは,図1に 示されるように,被測定端子,基準端子,補足説明の順に並べられることが多い. ここで、表3に示される補足説明は括弧で囲まれているが,紛らわしくない場合は括弧で囲わないこともある.
図1はエミッタ端子を基準としたベース端子の電圧の飽和した状態での値を表している.
シンボル | 英文説明 | 説明 |
---|---|---|
A,a | anode terminal | アノード端子(ダイオード等) |
A | ambient (temperature) | 周囲温度 |
B,b | base terminal | ベース端子(BJT) |
C,c | collector terminal | コレクタ端子(BJT) |
D,d | drain terminal | ドレイン端子(FET) |
d | delay (time) | 遅延時間 |
E,e | emitter terminal | エミッタ端子(BJT) |
F,f | forward direction | 順方向 |
f | fall (time) | 立ち下がり時間 |
G,g | gate terminal | ゲート端子(FETなど) |
H,h | holding (time) | 保持(時間) |
I,i | input | 入力 |
J | junction (temperature) | 接合温度 |
K,k | cathode terminal | カソード端子(ダイオード等) |
M,m | maximum (waveform peak) value | 最大(波形尖頭(せんとう))値 |
O,o | output, open circuit | 出力(端子),開放回路(開路) |
P | peak point | ピーク点(尖頭点) |
p | pluse (time) | パルス時間 |
R,r | reverse direction | 逆方向 |
repetitive (as 2nd subscript) | (第2番目の添字で)繰り返し | |
resistive termination | 抵抗終端 | |
S,s | source terminal | ソース端子(FET) |
stored (charge) | 蓄積(電荷) | |
short circuit(as 2nd subscript) | (第2番目の添字で)短絡回路 | |
U,u | bulk (substrate) | バルク(サブストレイト) |
V | voltage termination, valley point | 電圧終端, 谷点電圧 |
W | working | 動作 |
w | duration (width) of pulse | パルスの持続(時間) |
シンボル | 英文説明 | 説明 |
---|---|---|
(AV),(avr) | average | 平均 |
(OV) | overload | 過負荷 |
(PP) | peak-to-peak | ピーク・ツー・ピーク |
(RMS),(rms) | root-mean-square | 実効値 |
(TO),(th) | threshold | スレッシュホールド |
(sat) | saturation | 飽和 |
電源端子の名前は,供給する能動素子の端子名を繰り返すことによりあらわす.例えば,VCC,VEE, VDD,VSSはそれぞれ,BJTのコレクタ,エミッタ,FETのドレイン,ソースに供給される電源であることをあらわす. なお,接地(グランド)はGNDとか0(数字のゼロ)であらわすことが多い.