ダイオード Diode

2017-04-03

ダイオード

ダイオード表す記号は図1(c),(d)を基本として,数々のバリエーションがある. 一般的に電流を一方向にのみ流すことができる素子はPN接合の有無にかかわらず ダイオードと呼ばれ,似たような記号が使用される.

PN接合のP側をアノード(Anode),N側をカソード(Casode)と呼ぶ(図1(a)). アノードはAと略記し,カソードはKと略記することが多い. なお,この資料における図1(a)に示すような半導体の構造はPN接合などの構造の説明のための概念的なものである.

図1 ダイオードの構造と記号
図1 ダイオードの構造と記号

回路記号はP側を底辺とする三角形と縦線でN側を表現する.印刷物では図1(b)のように三角形を塗りつぶしたものが多いが, 図1(c)(d)のように塗りつぶさなくてもよい.また,縦線は太く印刷されることも多いが,手書きでは 細い線で問題ない.

半導体素子としてのダイオードには数々の種類があり,その構造も多岐にわたり,新たな素子も開発され続けている. これらの素子の記号も,規格化されたもの,習慣的に用いられるのもなど多数あり,すべてを紹介することはできないため, 良く使用されるもののみを紹介する.なお,記号は構造よりも機能に重点を置き決められているので,構造が全く異なっていても, 同じ様な機能,用途の素子は同じ記号で表されることがあるで注意すること.

PN接合をあらわす矢印

半導体をあらわす記号ではPN接合をPからNへの矢印(図2)であらわすことが多い. BJTのように複数のPN接合がある場合は,そのうち1つ(BJTではエミッタ)を矢印であらわして端子の識別に使用する. この矢印も,印刷物では塗りつぶした図2(b)や(c)のようなものが使用されることが多いが, 手書きでは図2(a)のようなもので良い.

図2 PN接合を表す矢印
図2 PN接合を表す矢印

各種ダイオード

図3から図5によく使用されるダイオードの記号を示す. いずれも,図に向かって左側がアノード,右側がカソードである.

図3 いろいろなダイオード(その1)
図3 いろいろなダイオード(その1)

図3(a)はツェナーダイオードに代表される定電圧ダイオードを表す記号. 電圧によりツェナー効果とアバランシュ効果を利用したものに分かれるがいずれも同じ記号を使用する. カソードを右側としてカソードをあらわす線がZになるよう描く.印刷物ではこのZの上辺,下辺が外側に開いた記号(図4(a))も使用される. 図3(b)はショットキーバリアダイオードを表す.このダイオードはショットキー障壁効果を利用したダイオードでPN接合はない. カソードを右側としてカソードをあらわす線がSになるように描く.Sであることを強調した図4(b)のような記号も使用される. 図3(c)はバリキャップ(Varicap)などの可変容量ダイオードをあらわす記号で,カソードを表す線を2本にする. バリキャップはVariable Capacitance Diodeの略で,バラクタ(varactor)と呼ばれることもある.

図4 いろいろなダイオード(その2)
図4 いろいろなダイオード(その2)

図4(c)は江崎ダイオード (Esaki diode)またはトンネルダイオード (tunnel diode)を表す記号. 量子トンネル効果を利用したダイオードで,順方向の「負性抵抗」が現れる電圧領域を利用する.1957年に江崎玲於奈が発明した. 江崎は1973年にトンネル効果の発見によりブライアン・ジョセフソンと共にノーベル物理学賞を受賞している.

図5 いろいろなダイオード(その3)
図5 いろいろなダイオード(その3)

図5(a)はLEDに代表される光の出るダイオード.レーザダイオードも同じ記号を使用するが, LEDと区別するためにLDなどと別記されることが多い. 光の出る様子を2本の矢印で表している.この矢印の数は1本であることもある. 図5(b)はLEDやLDとは逆に光が入ると電流の流れるフォトダイオード.光の入る様子を2本の矢印であらわす. 光通信で受光素子として用いられるAPD(Avalanche Photodiode)は,アバランシェ増倍と呼ばれる現象を利用して受光感度を上昇させたダイオードで, 普通のフォトダイオードとは異なる構造であるが,記号としては同じものが使用される.LED,LDの区別と同様にAPDと別記されることが多い.

図5(c)は流れる電流が定電流となる定電流ダイオード(CRD)である. アノードからカソードに流れる電流が一定になるダイオードで,内部構造は接合型FETのゲートをソースを接続したもので, 接合型FETのゲート・ソース間電圧が0の時のドレイン電流がドレイン・ソース間電圧が変わってもほぼ一定であるという性質を利用したものである. アノード側の電位が高い状態で使用するのが基本で,逆方向に電圧を掛けると短絡(ショート)状態になるので注意すること. 三角形が塗りつぶしのない丸になっている.