単位と次元

2019-10-07

SI単位系

国際単位系の名前のフランス語表現であるLe Système International d'Unitésの頭文字をとって, SI単位系と呼ばれる. SI単位系は十進法を原則とした最も普遍的な単位系である. 略称がフランス語にもとづいているのはメートル法がフランスの発案によるという歴史的経緯による.

SI単位系はメートル条約に基づきメートル法のなかで広く使用されていたMKS単位系を拡張したもので, 表1に示される7つの基本単位を組み合わせてすべての物理量の単位を表現する. (MKS単位系は長さ:メートル(m),質量:キログラム(kg),時間:秒(s)を用い, 3つの単位の組み合わせでいろいろな量の単位を表現していた)

かつては,原器と呼ばれる単位の基準を作る事で単位を定義していたが,すべての単位は物理法則を用いて定義されている. このため,基準は定義が変わらない限り常に一定である. 質量の単位がグラム(g)でなく,1000を表す接頭語キロ(k)のついたキログラム(kg)となっているのは,歴史的な経緯によるものである. なお,SI基本単位のアンペア,ケルビンは人名に由来している.

表1 SI基本単位
基本単位記号
時間s
長さメートルm
質量キログラムkg
電流アンペアA
熱力学温度ケルビンK
物質量モルmol
光度カンデラcd

SI組み立て単位

表 SI基本単位 にない単位は,SI基本単位の組み合わせで表現する.これを組み立て単位という.組み立て単位の例を 表2に示す. この表のように組み立て単位は基本単位の積の形であらわされ,これを単位の次元と呼ぶ.屈折率,比透磁率のように比率を表す単位の次元は無次元である.

表2 SI組み立て単位の例(1)
組み立て量名称単位
面積平方メートル m2
体積立法メートル m3
速さ・速度メートル毎秒m/s(m⋅s-1)
加速度メートル毎秒毎秒m/s2(m⋅s-2)
密度・質量密度キログラム毎立法メートルkg/m3(kg⋅m-3)
面密度キログラム毎平方メートルkg/m2(kg⋅m-2)
電流密度アンペア毎平方メートルA/m2(A⋅m-2)
磁界の強さアンペア毎メートルA/m(A⋅m-1)
輝度カンデラ毎平方メートルcd/m2(cd⋅m-2)
屈折率(無次元)1
比透磁率(無次元)1

SI単位系の組み立て単位には固有の名称と記号で表されるものが22個ある.そのような単位の内,放射線の強さや吸収量に関わる単位と酵素活性に関わる単位を除く 18個を表3に示す. 電気/電子/光に関連するほとんどの単位は組み立て単位である. この表において,「表現1」は組み立て単位を主に用いて表した表現,「表現2」は基本単位の積のみで表した表現である.また,「表現2」 において無次元は「1」と表現されている.

これらの単位の名前は,単位が表す物理量に関しての研究を行なった科学者に由来するものが多く,この表では, ラジアン,ステラジアン,ルーメン,ルクスを除く14個は人名に由来している. なお,この表において圧力は応力,エネルギーは仕事または熱量, 電力は仕事率,電荷は電気量,電圧と電位差は起電力と同じものである.

表3 SI組み立て単位(固有の名称と記号で表されるもの)
組み立て量単位の名称名称(英文)記号表現1表現2
平面角ラジアンradianrad(無次元) 1
立体角ステラジアンsteradiansr(無次元) 1
周波数ヘルツhertzHzs-1
ニュートンnewtonNm⋅kg⋅s-2
圧力パスカルpascalPaN/m-2m-1⋅kg⋅s-2
エネルギージュールjouleJN⋅mm2⋅kg⋅s-2
電力ワットwattWJ/sm2⋅kg⋅s-3
電荷クーロンcoulombCs⋅A
電圧(電位差)ボルトvoltVW/Am2⋅kg⋅s-3⋅A-1
静電容量ファラッドfaradFC/Vm-2⋅kg-1⋅s4⋅A2
電気抵抗オームohmΩV/Am2⋅kg⋅s-3⋅A-2
コンダクタンスシーメンスsiemensSA/Vm-2⋅kg-1⋅s3⋅A2
磁束ウェーバweberWbV/sm2⋅kg⋅s-2⋅A-1
磁束密度テスラteslaTWb/m2kg⋅s-2⋅A-1
インダクタンスヘンリーhenryHWb/Am2⋅kg⋅s-2⋅A-2
セルシウス温度(摂氏)セルシウス度degree celsius °CK
光束ルーメンlumenlmcd⋅srcd
照度ルクスluxlxlm/m2 m-2⋅cd

この表の中で,平面角をあらわすラジアンと立体角をあらわすステラジアンが無次元となっている. ラジアンは円の半径と円弧の長さの比により定義されるので,m/m より無次元となる. また,ステラジアンは球の半径の2乗と球の原点を頂点とする円錐が切り取った表面積の比により定義されるので,m2/m2より無次元となる. なお,全平面角は半径1の円の円周長である 2π [rad],全立体角は半径1の球の表面積である4π [sr]である.

固有の名称をもつ組み立て単位を使った組み立て単位の例を 表4に示す.

表4 SI組み立て単位の例(2)
組み立て量名称記号
角速度ラジアン毎秒rad/s
角加速度ラジアン毎秒毎秒rad/s2
熱容量・エントロピージュール毎ケルビンJ/K
熱伝導率ワット毎メートル毎ケルビンW/(m⋅K)
電界の強さ ボルト毎メートルV/m
電荷密度クーロン毎立方メートルC/m3
表面電荷クーロン毎平方メートルC/m2
電束密度・電気変位クーロン毎平方メートルC/m2
誘電率ファラド毎メートルF/m
透磁率ヘンリー毎メートルH/m
伝導率ジーメンス毎メートルS/m
電気抵抗率オーム・メートルΩ⋅m